先日、私の大好きな作品の続刊発表があり、歓喜に震えました。
相沢沙呼先生の作品を知ったのは「小説の神様」からで、繊細で柔らかな文のタッチにぐいぐいと引き込まれていきました。
その続刊の発売に際して、「小説の神様」について説明、紹介しようというのが今回の記事です。これを機にみんな相沢先生の作品読んで。
・あらすじ(講談社タイガ文庫から引用)
僕は、小説の主人公のなり得ない人間だ。学生で作家デビューしたものの、発表した作品は酷評され、売り上げも振るわない……。物語を紡ぐ意味を見失った僕の前に現れた、同い年の人気作家・小余綾詩凪。二人で小説を合作するうち、僕は彼女の秘密に気がつく。“彼女の言う、小説の神様”とは? そして合作の行方は? 書くことでしか進められない、不器用な僕たちの先の見えない青春!
「小説の神様」は一言で表すなら、所謂クリエイター側の物語。
「SHIROBAKO」や「ハケンアニメ!」、「こみっくがーるず」など、創作者側の物語は、今や大分普及しつつあるジャンルです。そんな「小説の神様」もその一つです。
何よりこの作品の特徴であるのは、「売れない作家の視点」で、一般文芸の小説家の苦悩がギッシリと詰まった作品になっています。
作者自体が、小説シリーズや原作の打ち切りを何度も経験しているせいか、主人公から発せられる嘆き、嫉妬はどこまでも生々しい。
自分の物語を待っている読者なんて居ない、小説に人を動かす力なんてない、売れない小説になんの価値がある?
趣味や同人ではない、生きるか死ぬかの商業で食っているが故の事情、葛藤が濃密に描かれていました。正直、すごく重い。読んでてつらい。
ですが、それでも、この物語の目標は、「小説を書くこと」……ひいては「小説を書く意味を見つける」ことです。
ヒロインである小余綾詩凪が、「小説には人を動かす力がある」と何度も叱咤するように。「小説を書いてみたい」と言う後輩の成瀬秋乃を巡り、ありのまま物語を書くべきか、かける言葉に迷い、思索したように。
千谷のように内気な人間が物語の主人公たり得ないとしても、そんな自分の書く物語が多くの人にウケないとしても、彼は小説を書く道を選んだ。それはなぜか? 詩凪の言うような力は、光は、執筆の先にあるのだろうか?
小説を、物語を愛する人に、是非読んでいただきたい一冊です。
そして8月22日に出る続刊も読んで……